今回の本は
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上下巻、これも一気読みでした。もちろん内容が面白かったからなのですが他にも理由が
桐野氏にはまってから1年ぐらい経つんだろか?図書館で予約しすぎると期限内に読み切れなかったら困ると控えめにしていたところ、本が途切れてしまった。依存体質な私は『桐野ロス』に
これはツライと多めに予約したら案の定、借りた本が家に数冊滞留してしまった
寝る間も惜しんで読んでいるけど、またじっくり読みたいです
主人公の東一は『イワン村』、人々が互いに愛し共同で生きるという『理想郷』を理念として、東一の祖父が建設した村で生まれ育った若者。しかし自分と同年代の者は皆離村し、残ったのは老人ばかり。『絶望郷』となりかけている村に取り残されている東一は、その村で生きる決意をし、自分の力で村を立て直そうと奮闘する
ただ東一は正義感の強い自己犠牲も厭わない若者なのではなく、そんな人は桐野小説にはまあでてきません
東一はリアリストで現実をクールに分析します。この村にいても自分は高齢者にいいように使われるだけで楽しく生きることなんかできない。お金が欲しい、綺麗な女性と出会いたい、と普通の若者の普通の欲望を持ち、あくまで自分が楽しく生きるために村の問題に立ち向かおうとします
そのやり方がかなり強引で我儘な性格、でもなんだか憎めないしカッコいい男です
またこのお話、桐野作品には目づらしく最後がハッピーエンド的、というか、私は納得の終わり方だったので後味が良かった
理想郷なんて現実には存在しないと思ってます
でももしかしたら、将来今が理想郷だったのだと思うようになるかもしれない、とふと思う
誰もが等しく安い医療を受けられて、60歳から年金がもらえてたなんてまさに「理想郷」だと。先日も70歳まで働けとテレビのワイドショーで言っていた
東一の村も理想郷と言って実際は一部の男性と女性たちの献身的な労働で支えられていた。そして彼らが高齢化し村は崩壊が始まる
村を救うのはやっぱり若い世代だと考える東一
ヒロインの真矢は、突如東一の村に現れた美少女で、若い東一は真矢を手に入れたいと思うものの、真矢の心の内を全く理解しようとせずすれ違いばかり。この若い二人のジリジリとした感じも面白かった
ハッピーエンドと言いましたが、村のその後はどうなったんだろうか、とか、二人は将来どうなるのか、とか今後もまだまだ波乱がありそうでそれを想像するのも楽しい
きっと和子と山路は折り合いが悪くなり、昔からいた女性たちも和子に反発するようになるんだろうな、とか
「愛がなければ生きていけない厄介な動物が人間」と和子が東一に言う場面がありますが
ホントにその通りだと思うし愛と言ってもいろんな愛の形があって、恋愛、家族に対しての愛、友情だって愛の一部だと思うし不倫もそうだし、推しへの愛とか
私自身の愛情人生を振り返ってみると「家族」→「友達」→「恋愛」→「結婚」→「子ども」→「推し」(今ここ)
人生初の推し活にまい進中なので、和子の言葉が身に染みた
推し活って、人間の本能を商用に利用されてるとわかっているのにやめられないのがやばい
それが人間というどうしようもない生き物なんですね